ばなな
私たちはヘリコプターで学校に帰るまでの間、ふるふるをしていた。ふるふるというのは「雨降る夜に拳震わせ」という最近はやりの対戦型スマホゲームだ。単純ながら奥が深いゲーム性と食パンやクロワッサン、フランスパン、さらにはお米まで登場することから宗教を超え老若男女すべての人に愛されている。メロンパンやフランスパンなどを愛する人々はその愛の深さからそのパン以外を朝食にする人たちに対して現実でも拳を震わせてしまい社会問題と化してしまうほどだ。
ピコンッ
そんなとき私のスマホに一つの通知が来た。Tuwitorのダイレクトメッセージだ。
~Side 西 剛理羅~
「ネェ、、、、」
ウホ?(皆で楽しくふるふるをしていたのに急に親野八光が暗い声を発し顔を上げた。そして全員と目を合わせていく。ゆっくり、ゆっくりと。まるで何かを見定めるように。その顔はひどく歪み、まるでこの世のすべての憎悪を集めたかのような表情だった。そんなに俺達が使った戦法が嫌いだっただろうか。確かにSNSでは陰キャと呼ばれ嫌われているが勝つために手段を尽くすのは当然のことだ。そのことで文句をいうのはお門違いというものだ。)
「ウホ?(どうした?親野?そんな怖い顔をして、陰キャ戦ぽ)」
「コノナカニィ!!!!」
「このなかに、朝ご飯に食パンではなくバナナを食べる人がいます。誰ですか?」
ウホ……(親野の手からはちみつが染み出し鍔のない刀のような形状をする。そしてその光を失った瞳は俺のことを見ていた。)
「ウホ!ウホホゥッ!ウホ!ウホ!」
~Side 親野八光~
クソゴリラがわめいている。人間と畜生では立っているライフステージが違うのだ。人間様の目をこれ以上汚さないためには死んでもらうしかない。
私は食パンを食べて生きてきた。はちみつトーストが人生だ。食パンがこの世にあるたった一つの真理だ。しかし食パン以外を許さないというわけではない。フランスパンも許そう。チョココロネも許そう。お米だって許してもいい。
ただしバナナ、テメーはダメだ。
私ははちみつ刀を握りしめ左足を踏み出す。