ロールプレイを始めよう

~SIDE KP~

 いきなり目の前でCの右腕がぐちゃぐちゃになり、この世界が俺たちのいた世界に比べてかなりぶっ飛んだところだということを嫌でもわからされてしまう。

 「コヒューッ、コヒューッ」

 Cもの奴も過呼吸を起こしながら見るからに衰弱している。無理もない。ダイスを振らされたと思ったら右腕がパーリーしたんだ。

 ん?さっきあの化け物なんて言っていた?

 失敗……TRPGだから仕方がない………!それなら!!!

 

 「おいA!!!たしかお前応急手当にそこそこ振ってたよな!!!」

 「は?いきn「さっきまでのキャラの技能の話だ!」っああ、たしか+35くらいは……そういうことな!!!」

 

 

 「頼んだ!!65以上は失敗だから頑張っていい感じの値を出してくれ!!!」

 

 あいつはここがTRPGの世界だと言った。そしてCはダイスロールで失敗した結果として右腕をやられている。ならさっきまでこの世界を舞台にTRPG俺たちも技能くらいは使えるはずだ!

 「っとダイスは…Cの足元にあった!よし!Cに対して”応急手当”を振るぜ!」

 

 1d100→3→クリティカル

 

 「よし!!!」

 「見てくれ!Cの出血が止まってきたぞ!!!」

 「Cくん大丈夫?」

 

 「はぁ…はぁ……あ、あれ、俺さっき右腕が…でももうそんなに痛くない…?」

 「どうだ?右腕は動きそうか?」

 「……何の違和感もなくってことならまだ厳しいかな、さっきまでの惨状と今の状況の差に頭が追い付いていないのかもしれない。とはいえ今でも全く動かないわけじゃない。もうしばらくしたら元通りに動いてくれると思う。」

 

 やっぱりだ。ただの”成功”だったらおそらくCの出血が止まって精神的に多少落ち着くくらいで終わりだったろうから判断が難しかったかもしれないが、今回クリティカルが出てくれたおかげで確信が持てた。この世界は良くも悪くもダイスロールにすべてかかっている。

 

 「だとしたらあいつが10面ダイスおいてってくれなかったら危なかったな…」

 奴もそこまで気がまわらなかったのかわざとなのかわからないが、俺たちの手元にダイスがあるのはかなり幸運だろう。

 

 「みんな聞いてくれ。さっきまでの感じを見るにこの世界は俺たちがプレイヤーとなったTRPGの世界だ。」

 「ああ…わけわかんねぇけどな…」

 「ファンブルが本当に命取りになりかねないね…」

 「しかもさっきまで全く気にしていなかったが、自分たちの世界にいるときは何言ってるかわからなかったあいつの言葉もこの世界にきてからは普通に聞き取れる。」

 「本格的にこの世界の住人になっちまったわけだな。」

 

 

 「そこでみんなに相談なんだが」

 「ダイスを振りながら元の世界に帰る方法を探そうってか?」

 「ダメか?」

 「全然、むしろ大歓迎だ」

 「僕もそれがいいと思うな」

 「また腕がグチャるかもしれないって考えると怖いが立ち止まっててもどうにもならんしな…」

 

 みんなも乗り気らしい。ひとまず全員で技能の確認をすることにした。

 

 

邂逅

「いらっしゃい。よく来たね。」

口火がプレイヤーたちに言う。

「ここは…一体…!?」

PL、PK一同はみな戸惑いながら言う。

「ふふ、ここは物語の中さ。君たちの覗いていた…ね。」

口火は不適な笑みを浮かべる。

「覗いていた?まさか…。」

Aが言う。

「嘘だろ…。あの世界に入ってきちまったってのか…?」

そう言って、Bはあたりを見回す。

「てことはこの世界には剛理羅がいるのか!?ウホ」

Dがそういうと口火は

「まあそういうことになるね。ところで君、1d100だよ。」

Cを指さして言った。

「え、おい!起きろ!C!何か言われてるぞ」

BはCの頬をぺちぺち叩く。

「う~ん…ここは一体…?」

Cが目を覚ました。

「もう、そのフェイズは終わったよ。1d100だってよ。」

Bがいった。

「でも、ダイスがないよ…?」

Cがそういうと口火は10面ダイスを二つ手渡した。

「あ、どうも…。」

Cはダイスを受けとりダイスを振った。

片方のダイスは1を片方のダイスは3を天に向けていた。

「あちゃー。13かぁ。」

口火が言う。

「ハハッ。運が悪いなぁ!w」

Bが茶化すようにそういう。

「残念。20以下だから”失敗”だね。」

口火がそういった。

「え?」

一同が口をそろえてそういうと突如Cに向かってフランスパンが飛んできた。

グチャッ!

「うわああぁぁぁああぁぁ!!!」

Cの右腕がぐちゃぐちゃになっていた。

「運が悪かったね!まぁでもこれTRPGだからさ。仕方ないよね。」

口火がCに言う。

「それじゃ、みんな頑張って」

そう言うと口火はどこかへいってしまった。

天狗寺成魅

全身をほのかにむしばむ痛みとそれを感じさせないほどの力が身の内に存在していることを確認しながら目を覚ます。

「ここは.......」

ガシャンッッ!!

腕を動かそうとして鎖で四肢を拘束されていることに気づく。

おそらくここは父が各地につくらせた研究所のうちの1つだろう。 あのとき何が起こったのかはわからないがなにかトラブルが発生し、 ここへ逃げてきたのだろうと考える。

わたしは"おにくさん"にもらった力を意識してみる。 この力があればこの研究所を破壊して逃げることもたやすいだろうという事を確認する。

おにくさんというのはあの時私が幻視した溢れる肉の塊と血の色の瘴気からなる一般的には化け物と呼ばれそうな見た目をしている存在のことだ。 わたしのキメラとしての階梯が上がりおにくさんに存在が近づいたことで認識しても正気を保っていられるようになったため接触を図っていたらしい。

おにくさんはこの世界の境界の外にいるため普通では会話するのが精いっぱいらしいが現在はこの世界の境界が揺らいでいるためそれ以上のことが出来るらしい。 そのおかげでおにくさんのもつ"浸食"という権能をわたしでも振るえるようになっている。 この力はその名の通り現実に浸食する肉塊を生み出す力だ。 具体的にはわたしの体から生み出されそれに接触した物質はそれと同質の存在、つまり肉塊に変換されるという力だ。

いつでも浸食によって逃げ出すことが出来るだろうという安心感はわたしに思考を研ぎ澄まさせる余裕を与える。

今すべきことはこの世界に起きているであろう事変について少しでも多くの情報を得ることだ。 そのためには今逃げ出さず父親との会話が必要だろう。

おにくさんの話によると世界の境界が揺らいでいるのはこの世界に出入りしている存在が原因らしい。

つまり今この世界にはもともとこの世界にいなかった存在が存在していてそれが原因で混乱が起こっている可能性が高いという事だ。

カツ、カツ、カツ──────────

このもったいぶったような歩き方と足音、わたしのお目当ての存在が私が目を覚ましたことに気づいたらしい。

「おはよう、エリー。思ったより元気そうじゃないか。フランスパンの遺伝子が効いているのかな?」

「フランスパン...の遺伝子?なんのことですか、わたしの知っているフランスパンは食べ物であって生物ではありませんでしたが」

「ククッ。そうか、お前は知らないんだったな。俺が研究所から脱出してから現れだした愉快な怪物のことを」

フランスパンの怪物。そんなものは知らない。 つまりこいつが現在この世界に入ってきている異物というわけだ。 そしてそれをわたしに取り込ませたという事だ。


────────────────────────────────────────

あの男がしゃべりそうな情報はおおよそ手に入れたといってもいいだろう。 この後わたしはわたしの体に適合したフランスパンの遺伝子の力を確認するために実際にフランスパンの怪物と戦わせられることになるらしい。

逃げ出すならそこだろう。 フランスパンの怪物と戦うふりをして浸食の権能を振るいあの男もろとも研究所を崩壊させる。 そのあとは、フランスパンの怪物を討伐しながら残っている研究所を浸食していこうと思う。

もう二度とわたしと同じような存在を生み出さないために。

着。剛理羅家

「ここがゴリラ君の家かー」

「でっか~~~~い!木がいっぱい生えてる~~~~~~!!」

「きゅぅきゅぅ^^」「ㇴァ~~~~~~~~~~」「スゥゥゥゥゥゥゥ!」

「ステちゃんもナコちゃんもナーちゃんもうれしそう!!私ここに住もうかな~~」

「そんなことより早くゴリラ君に会わないと」

(ウッホーン)

「出てこないなぁ」

(ウッホーンウッホウッホウッホーン)

「ウッホーーーー!!!ウ(うるさいんじゃーーーーー少しくらいまつこともできんのかーーーー!!って親野と今田じゃん)」

「わーー、びっくりしたぁ。ごめんねー遅くなっちゃった」

「ウホ(猩猩はもう来てるぜ、でもまだ西恋ヶ窪がきてないからな、とりあえず中で待つことにしよう)」

 

ドドドドドドドドド

 

「なんかすごい音しない?」

音の方に目を向けると形容し難いフォルムの乗り物がこちらに向かってきていた。

 

「すまん待たせた、途中しつこいフランスパンが2,3本いてな。ってどうしたんだお前ら、そんなすごい顔して」

「ウホ(いや、その乗り物が気になってな)」

「このドシタンハ・ナシキコcarがおかしいか?いいだろこの曲線美」

「ウ(ウ)」

「そんなことより剛理羅、この状況どうにかできるってどういうことだ。」

「ウッウホホホホ(今お父さんに解読してもらってる本があるんだけどもさ、それには邪神の撃墜方法とかいろいろ書いてあるんだ。それにきっと今の子の状況を打破する方法があるはずなんだ。でとりあえずみんなに来てもらったんだ)」

 

「うおおおおおおおおおおおおお解読できたぞおおおおおおおおおおお!!!剛理羅ぁぁぁぁああ!!!(うほっ!!うほほ!!うっほほっ!!)」

 

「ウホンホホ(まじ!!?みんな解読できたらしい!!ほら入った入った)」

 

剛理羅家:居間

 

「剛理羅!あっ、お、おととtもだddちもいいいsssしょでdしたか、あっあっ、なんんんんかのみmますか。ばなぁ~なジュースしかななnいですけお。(うほ!ぅ、うほうほうほほ)」

「いえ、大丈夫です。それよりも解読が終わったって聞こえたんですけど」

(ウホ―ホ⦅やっべ、父さん人前でしゃべれないんだった⦆)

「あゅ、は、ひい。この本、あっ、ババババナナノミコンっていいいうんですえけけえども、そこにんでsssすね、かいてあったんですよ、こっこここにはでdすすすね、っこうしるしてああありますうう。(うううううううううううほっほほほほほほほう)」

 

たどたどしい剛理羅の父バナナノミコンに書いてあった内容を話し始めた。

 

食パンとの別れ

巨大なパンが現れてから1週間後

 

フランスパン教集会所(旧クロワッサン教第3支部)において巨大な衝突が発生していた。

この衝突により、各派閥甚大な被害を受けた。

 

さらにそれから1週間後コメスタン本部にて 

 

「親野さん。先日の戦いの報告書です。」

 

14:26

各方面からパンが集結する。

14:31

現地エージェントからの通報を受け、コメスタン第2,3,4支部が現場にむかう。

14:33

一度目の激突。

14:36

コメスタン到着。これを受け、フランスパンが亀裂よりフランスパンの天使を呼び出す。

14:42

クロワッサンの攻撃により、フランスパンの天使が全滅する。ここまでに、第3支部第2部隊が壊滅。他の部隊も半数近くの人員を失う。

14:46

二度目の激突。食パンがフランスパンに対し大きなダメージを与え、フランスパンが亀裂に一時撤退する。

14:49

フランスパン再出現。

14:50

フランスパンが食パンに対し攻撃を開始する。

14:58

フランスパンの攻撃により、食パンが破壊される。

14:59

小麦粉が主原料だと思われる巨大な塊が出現する。

15:02

西親子到着。

15:05

西親子が何かの儀式の準備を始めたのを確認し、フランスパンが撤退する。

...

 

「...ふむ、この空白はなんだ?」

「はて?現場から送られてきたものをまとめただけですから、文字を消したりはしていないはずですが...」

「まぁよいか...西親子の行おうとした儀式が鍵を握りそうだな。今すぐ西博士に連絡を」

 

シリアスですよ?

~side 口火~ 

 覗いてたやつらをパッと見た感じ、そんなに強そうには見えない。ただのガキって感じだ。てっきり神の戯れのような感じで僕たちの世界をのぞいているんだと思っていたからね。

 「君たちは何なんだい?見た感じ特別な力を持っているってわけじゃなさそうだけど」

 

 「〇〇×〇■▽〇」

 「■■△◇〇」

 「ー〇□×」

 

 全くなにを言っているのかわからないな。今の僕は機嫌が悪いからさっさと殺しちゃいたいけどさすがに早計過ぎるか。

 

 「とりあえず僕たちの世界に来てもらおうかな。こんな機会またとないだろうからね。」

 そうして僕は何かわめいているこいつらを僕たちの世界に引きずり込んだ。

~PL&KP~

 A「なんかおもったよりも人外チックなのが出てきたな。」

 KP「気づいたらシナリオが真っ白になってるしどうすればいいんだろうね。」

 B「てかみんな落ち着きすぎじゃない?一応この人結構強い人じゃなかったっけ。」

 A「んなこと言ってもよぉ、いきなり上の空間に亀裂が入ってそっからフランスパン  生やしたバケモンが出てきたんだぜ?ここまで滅茶苦茶なことが起きると逆に落ち  着くだろ。」

 D「しかも何言ってるかわかんないから意思疎通のしようがないウホね。」

 C(白目をむいて気絶)

 A「Cの奴静かだなぁって思ったら気絶してるだけかよこいつ。」

 B「どっちかというとCの反応が正常な気がするなぁ…ってちょっと待って!?なんか  私たち宙に浮いてない!!???」

 A「これは俺たちもあの歪みに飲み込まれるパターンか?」

 KP「草」

 D「もしかしたら剛理羅にあえるウホかね」

 B「もっとみんな焦ろうよ!!!!!!」

 

 意外と肝が据わっている彼らであった。

クロワッサン教の集結から数分。男はクロワッサン教本部を後にし、逃げていた。

「冗談じゃねぇ!いくらこんな状況だろうとわけもわからず殺されてたまるか!」

男の名は有明 若月(ありあけ わかつき)。彼はクロワッサン教信徒でありクロワッサン教の生き残りの一人だった。

 

彼は、18歳でクロワッサン教に入信、その後7年クロワッサン教を信仰し続けた。そして今、世界がフランスパンに包まれ、クロワッサン教が壊滅しかけ、黒輪が不思議な呪文を唱え空が裂け周りの同志がバタバタと倒れていく中、有明の心が、信仰心が濁った。

俺はこんなわけのわからない終わり方を迎えてもいいのか?

彼は昔からタダで終わることだけは許せない質だった。

遊びでも仕事でもなにであろうとそうだった。その思いが信仰心を上回った。

「こんなところで死ねるか!」

有明は倒れ行く信徒と黒輪を置いて駆けだした。

「どこへ行く!」

黒輪が叫んだ。

有明は無視して走り続ける。

「チッ!追え!」

「ハッ!」

信徒が有明を追って駆けだした。

 

「ハッ、ハッ」

有明が町まであと1kmほどの地点にたどり着いたころ。

ガサッ!

後方の森から音が聞こえた。

「でてこい!いるのはわかってるぞ!」

返事はかえってこない。

「ならこっちから行くぞ!三日月の輪舞(弧描くクロワッサン)!」

有明の手から放たれたクロワッサンが弧を描き森へと飛んでいく。

 

ガサガサッ!

 

(おかしい。クロワッサンが戻ってこない?)

有明が異変を感じたのもつかの間森の中からフランスパンの怪物が現れた。その右手には赤い血がついていた。

「嘘だろ!?」(こいつ追ってをやったのか!?)

「畜生!」

有明は町へ向かって再度駆け出した。