実は、朝はパン派

「ピー――犯罪者の9割以上が食パン教信者であることをご存じですか?邪教食パン教を今すぐ抜けましょう。そして、クロワッサン教に入りましょう!朝食にはクロワッサン。さぁクロワッサン神に祈りを捧げましょう!――」

まったく...最近の宗教勧誘は留守電まで残すのか...
そして、またクロワッサン教か...
一瞬でも天狗寺さんからの電話じゃないかと期待した自分がいるのが恥ずかしい
そんな漫画や小説のような展開があるわけがないというのに...

 

そういえば、今朝天狗寺さんに出会ったときに何かに目を惹かれたことを思い出した。あれはなんだっただろうか...
美しい長髪、すらりと伸びた7本の腕、しなやかな前脚、力強い後ろ脚、煌めく鱗、蜂蜜にもシロップにもまみれていない柔らかな翼(きっと本来の用途でも使えるのだろう)...

どれも違う気がする。程度は劣るがそれらは誰でも持っているものだ。
もっと決定的な違いがあったはず...だからこそ目を惹かれたはず...

「...そうだ食パンだ!」
そう、天狗寺さんは食パンを加えていなかった。それどころか、彁が無かったのだ。
彁なしで食パンを加えることは禁忌である。口で食パンを食べるなど食パン神様を冒涜する行為に当たってしまう。それがこの国の常識だ。
まぁ、朝に食パンを食べることは推奨されているが、強いられているわけではないから問題は無いのだろう。

疑問が解決しスッキリした。

 

ピンポーン


そんなことを考えていると、玄関からドアホンの音が聞こえてきた。
クロワッサン教の勧誘だろうか?一度でも勧誘の電話に出てしまったのが失敗だったようだ
「はちみつーーいるんでしょーーちょっとでてちょうだーい」
姉の声も聞こえてきた。配信は終わったようだ。姉はめんどくさいことは何でも私任せにする。しかし、逆らうと面倒なことになる。渋々、玄関に向かいドアを開けた。

「はい、どちら様でしょうか?」