日常.

 

ドアを開けると酔っぱらっている母親がいた.

「たぁいま~~~~、はちみつちゃ~~~んあけてくれてありがとぉ~~~~~~」

母の名前は親野欲目おやのよめ、私たちを女手一つで育ててくれている自慢の母だ.

私たちのことを実際よりも高く評価しちゃうところがたまに傷.

そんなところも含めて私たちはこの人のことを愛している.

 

私たちの父親は今どこにいるのかわからない.

仕送りだけは毎月送ってくるから生きていることは確かだ.

ほのかに覚えているのはとても大きな人だってこと.

昔,一度だけ母に父について聞いたことがある.強くてかっこいい人だったらしい.

今は遠くで大変な仕事をしていて,帰ってくる時間を作ることが困難だとか.

 

「はちみつちゃ~~んごはんなにたべりゅ~~~?はちのこ~~?」

「お母さん酔っ払ってるでしょ,いいよ私が準備するから.今日のご飯は馬刺しだよー」

「やっちゃ~~~」

「ちょっとー,今ウマ車でGO!!やってるんだから配慮してよねーー」

「じゃぁ,お姉ちゃんはご飯なしね」

「食べないなんて言ってないしー」

「はいはい,じゃあちょっとまっててね」

「「はーーい」」

 

平和で何事もない平凡な日常.どこにでもいる普通の家庭の普通の会話.この生活がまさかあんなことで簡単に崩れてしまうだなんてこのときの私は知る由もなかった.