人の不幸は
家に帰ると私の大っ嫌いな姉がいた。
「こんにちはーーー!!!蜜野カエデですっ☆ 皆に笑顔と元気、届けちゃいまーっす☆」
リビングで配信をするのは本当にやめてほしい。
基本的にこの人は性格が悪い。優秀な姉に比べれば凡庸な私は小さいころからよく姉にいじめられた。足元にメイプルシロップぶちまけて私を転ばせたり、私の水筒の中身を勝手にメイプルシロップに変えたり、機嫌が悪い時には私の顔の周りをメイプルシロップで覆って窒息させられかけたりした。
そんな人が画面の前では愛想を振りまいてきゃぴるんしてるのを見せられるこっちの身にもなってほしい。なまじ顔がいいだけにちょっと様になってるのもまた腹が立つ。
これを邪魔したりしようものなら私の体中の血液をメイプルシロップにされかねない。そんなのは御免だ。
私はできるだけ音をたてないように自分の部屋に向かった。
「天狗寺さんかぁ~」
今日出会ったすごい(らしい)人のことを思い浮かべる。彼女は人の上に立つタイプの人間だ。私の姉とはまたちょっと違ったタイプの優秀な異能使いなんだろう。お友達になれたらいいなぁ。
なんてことを考えていたら私の携帯に電話がかかってきた。
ブーッブーッブーッ
「ん…非通知?」
なんかの勧誘だろうか、そう思ってとりあえず無視することにした。
ブーッブーッブーッブーッ
何ともしつこい電話だ。さっさと切るなりしてくれないかなぁ。
そんなことを思っていたら留守電に切り替わった。
「ーーーーーーーーーーーー…」
「…………え?」