この仕事は金払いがいい。俺のような事情がない限りこんな仕事を薄給でやりたがる奴はいないだろう。処理対象はちくわの力を得てしまったとはいえ、俺のようにもとは人間だった奴らが殆どだ。処理したやつの中に知り合いがいた、なんて奴もざらにいる。そんな状況だから、この仕事に就く奴は大半が元傭兵や金に困っている奴だ。

 俺たちの給料の元は税金だ。だがそこに文句を言う国民は誰もいない。みんなちくわ使用者の暴走に苦しんでいるからだろう。ちくわ使用者による被害報告は後を絶えない。建造物の半壊とかで済むならまだましで、ひどいときは市が一つ滅んだ。地獄といわれて何を思い浮かべるかと問われたら俺は間違いなくあの時の惨状を思い浮かべる。

 

 自宅に到着してすぐ俺は体のメンテナンスを始めた。いつものように胸の合成皮膚を一枚めくり、機械を取り外す。そのふたを開けるとしなびて黒ずんだちくわが姿を現した。

 

 俺は今、ちくわ無しでは生きることすら許されない。3年前不慮の事故でちくわのカケラを誤飲してしまったことで法律に基づき処刑された。はずだった。目隠しをされ絞首台に上がると思いきや、次に視界に入ってきたのは巨大な研究施設だった。どうやらカケラとはいえちくわを口にして正気を保っているという事例が初めてだったらしい。

 

 処刑されていた方がましだったかもしれない。そんな考えで頭がいっぱいになるほどここでの時間は苦しいものだった。体を切り刻まれる、穴をあけられる。プレス機でつぶされる。ちくわの能力で再生はするものの、痛みは感じるからたちが悪い。

 だが、ちくわの力とはいえさすがに限界がある。そこで研究者の奴らは俺に微量のちくわを与え続けることで死なない傭兵として育てることにしたらしい。だが、ちくわの経口摂取はあまりにもリスクが高い、そこで俺の心臓のあたりにちくわの成分を抽出し、血管に直接送り込む機械を埋め込んだ。

 

 傭兵なんてやってられるかとも最初は思った。だが、俺がちくわを使用したことで3親等の親族まで皆処刑されてしまったことを思うと、そんなことも言っていられない。

 そうして俺はこれからも処理班として生きていく。