The beginning of the end

 私は失念していた。

 今私たちが取り扱っている最終兵器「ちくわ砲」はちくわのエネルギーを極限の極限まで圧縮し、ちくわの形を模した大砲から発射するというものである。この五年間、この戦いを終わらせることだけに力を注ぎ、ちくわを少し、ほんの少しずつ地道に収集しながらその破片を用いて研究を進め、ついにこの兵器の形にたどり着いた。

 少し考えればわかることだったのかもしれない。ちくわの取り扱い方を多少心得てきたといえど、これは「ちくわ」なのである。いままでその圧倒的な力で私たちの生活から平穏を奪っていったように、今まさにこの瞬間も私たちから勝利の喜びや終戦への安堵を奪おうとしていた。

 

 

 

 「!?? おい!!!ちくわ砲が七色に発光し始めたぞ!!!」

  

 神よ

 

 「まずい!!!砲身があり得ない形に変形し始めた!!!急いでこの場から離r」

 

 人間がちくわの力を制御しようなどというのは傲慢だったのでしょうか

 

 

 

 

 

 ちくわ砲だったものの周辺には何も残っていなかった。つい数秒前までここに国があり、戦争の真っ最中だったといってもおそらく誰も信じないだろう。それほどこの場所には何も残らなかった。

 

 ただ一つそこに残ったのは、つい先ほどまで「人間」と呼ばれていたものの姿かたちにそっくりな一つの生命であった。