無題

 そういえば、私について説明がまだだったね。

 

 私の名前は、そうだね、今は「C」とだけ言っておくよ。私は7年ほど前にこの「チクべニア王国」にやってきたばかりでね。右も左もわからない私に優しく声をかけてくれたのがウィカフ。私の親友さ。

 

 私とウィカフはよくショッピングとかもしたものさ、半年ほど前も何気ない日常をただ過ごし、明日はカフェにでも行こう。と約束をして別れたのさ。まさかそれが彼女との別れになるなんてね、お察しの通り次の日に彼女は約束の場所には来なかったさ。遅刻なんて珍しいな、なんて軽い気持ちで私は待っていた。でもいつになっても来ないんだ。何かがおかしいと思って連絡しようとしたら

「ごめん、今日はいけない」

の一文が送られてきた。心配したさ、体調でも悪いのか、事故にでもあったのか聞いたよ。でもそれっきり彼女からの返事は来ないまま4か月前のあの日が来た。

 

 朝ごはんを食べながら何気なくテレビをつけた。そしたら私の時は止まった。

[チルパタニア海岸 40代の女性 自殺か]

そんなテロップとともにバンビル=ウィカフ(48)と、名前が書いてあるんだ。信じられるかい?私の親友は知らない間にもう会えないところまで行ってしまったんだ。

 

 彼女が自殺するわけがない。彼女の死の真相を追い求めているときにある手がかりをつかんだ。今、そいつのところに向かっているのさ。