無題

【〇月×日】 

 私の親友の死から4か月たったころ、私はちくわの中身をのぞいてしまった。すべては彼女を奪った奴の正体をつかむために。

 

 今では常識となっている5年前に成立した「ちくわ法」。ちくわの中身をのぞくことはおろかちくわを上から見下ろすことも許せない。何なら今こうしてちくわに「様」をつけないことがすでに万死に値する重罪である。

 しかし、私にはもうちくわの中身をのぞいてしまうほかなかったのである。それほどまでに私は追い詰められていたのだ。打てる手はすべて打ち、万策尽きたかというところで最後の手段としてとった行動であった。

 のぞくことを決意した瞬間はとても苦しいものだった。ちくわを手に取り、最初に浮かんだのは私を心配している両親の顔だった。

 彼女がこの世を去ってから様子がおかしくなってしまった私を二人はずっと心配してくれていた。この日も私に明るくふるまってはくれていたが私が外に出た瞬間に母が泣き崩れてしまったのが聞こえてきてしまった。

 

 しかしちくわの中身をのぞいてしまった後はもう両親の顔は全く浮かばなくなっていた。あるのは手掛かりをつかんだという達成感のみである。その手掛かりについてはまたしかるべき時に書こうと思う。

 

 そうして私はまずあいつの元へ向かった。