彼女が自殺なんてするはずない。 それもあんなメールを送って。 彼女は明朗快活な人だった。 ちくわ法の成立のせいで仕事を失った時だって時間が出来るから、 なんて笑ってたっけ。

奴のところへ急ぎながら「ちくわ」について考える。 6年前、「ちくわ」に不思議な力が宿った。 それはとても強力で、だからこそ危険だった。 紆余曲折あり、生産は終了し所持することも禁止された。 だから、私がのぞいたそれも本来ならすぐ「機関」に提出しなければならないものだ。 しかしそれはできなかった。なぜなら、彼女にもらったものだから。

公式にはちくわの生産は行われていないことになっている。 しかし彼女からもらったちくわの生産日は私が彼女からちくわを受け取った日の2日前だった。

今は生産されていないはずのちくわ、なぜそれを彼女が持っていたのかは知らない。 聞きたくても聞けなかった。 彼女の顔があまりにも真剣だったから。 彼女はもしかしたら自分がこうなることを知っていて私に託したのではないかと、そう考えてしまう。

意思を、継ぐために。

これは私の考えだが彼女はおそらく「レジスタンス」に所属していたのだ。 ちくわに力が宿った時、世界は真っ二つに割れた。 ちくわを利用してより良い世界を築こうとするものと、 ちくわを根絶し、自分たちの地位が脅かされないようにするものに。

最終的にはちくわは根絶されちくわの力で世界を作り直そうとした彼らは 世界的テロリスト、統一世界政府に対するレジスタンスという事になってしまったのだ。 統一世界政府は「機関」を創設し、レジスタンスの残党を処理しようとした。 今でもレジスタンスと機関の闘争は続いていると言われている。 彼女は機関と戦い、死んだのだ。 そして自殺として隠蔽された。