突入
「久しぶりだなぁ、エリー」
そこには、いかにも不健康そうな白衣を着た男が立っていた。
「っ…!まさか、…お父…様…!?」
「お前とあいつが研究所から脱走してから約7年…。お前を探しながらお前を創り続けた。」
父親はそういうと目の前の肉塊を触りだした。
「しかし、できあがるのは不完全な失敗作ばかりだった。何度も創り直したが成功することはなかったよ…。」
父親はうつむきながらそう言った。
「皆さんは!?どこにやったんですの!?」
天狗寺は父親に問いただす。
「皆さん?あぁ、他の生徒のことか…?ふっ、さぁどうだろうなぁ。」
「くっ…」
バァン!
階下から爆音と大きな揺れが伝わってきた。
「なんだ…!?」
父親が戸惑う。その瞬間スピーカーから声が聞こえてきた。
「所長!大変です!スーツの男が所内に侵入!ものすごい強さです!警備員が対応していますがいつまでもつか…。至急所長室にお戻りください!」
(スーツの男?もしかして、真皮先生?)
「クソッ…。エリー行くぞ。」
そう言うと父親は天狗寺の手首をつかんだ。
「やっ、やめて!」
天狗寺は手を引っ張り抵抗する。
「チッ…。おい!薬だ!」
父親はスピーカーに向けて怒鳴った。
その瞬間、天狗寺につけられていた枷から薬が注入され天狗寺は眠りに落ちてしまった。
side:真皮
「こちら真皮!応援はまだか!」
真皮が片手に通信機器を持ち片手がふさがった状態で敵をなぎ倒す。
「こちら本部。先ほど応援部隊から通信があった。クロワッサン教に妨害され到着が遅れるとのこと。そちらの戦力のみでなんとかしてくれ。」
(私だけでなんとかするしかないようだな。)
研究所内の廊下を進むと目の前に大量の武装した警備員が立ちはだかる。
「止まれ!」
警備員がそう叫ぶ。真皮は首をコキリとならし、
「少々、骨が折れるな。」
真皮は警備員の目の前でスーツを脱ぎ捨てた。
「おい何をしている!止まれ!次に不穏な動きをしたら撃つぞ!」
警備員は銃口を真皮に向ける。
「次は無い。」
次の瞬間、真皮が先ほどとは比べ物にならない速度で飛び出す。
「オゴォ…!」
最前列の警備員が膝をつきうずくまる。
「うわぁ!」
バァンと後ろの警備員達が発砲する。しかし、真皮はそこにはいない。銃弾が床や壁に着弾する。
「こっちだ。」
いつの間にか真皮は警備員達の背後に回っている。
「うわぁ!」
「ぎゃあ!」
「あべし!」
「ひでぶ!」
「メメタァ!」
そこに残ったのは警備員達の山だけであった。
真皮の異能は「抜身(ばっしん)」その身に纏う鎧や服を脱ぎ捨てそれによるリスクの分だけ身体能力が上昇する。
防弾スーツを脱ぎ捨て真皮の身体能力は約5倍に上昇していた。