幕間---在りし日の剛理羅

 自分が朝バナナ派であることを恥じたことは生まれてから一度もない。

 俺の家系は由緒あるバナナ派の一族だ。俺がまだ小さいころにお爺様から聞いたことがある。

 「今は食パン、クロワッサン、フランスパン、ご飯といった、いろいろな種類の朝食を至高とした者たちがいるが、200年前の大戦が起きるまではコーンフレーク派とバナナ派しかおらんかったのじゃ」

 当時の俺はそれならばなぜ今バナナ派はこんなにも世間の風当たりが厳しいのか、コーンフレーク派は今どうなってしまったのか、気になることがたくさんあってお爺様に質問したのだが、ただ苦笑いして話を逸らすだけでついぞ話しを聞けることなくこの世を去ってしまった。

 俺はどうしても理由が知りたくて、1年前のある日「お前がこの家を継ぐまで入っちゃいけないよ」といわれている書庫にこっそりと忍び込み何か手掛かりがないかを探していた。ここにあるという確証はなかったが、あの時のお爺様の態度を考えるときっとその時の私にはまだ聞かせるべきではないと思っていたのだろうと考え、ここへ立ち入ることを決意した。

 一度間違えて入ってしまったのだが、その時は父がゴリラの形相で私を見つけた。

 怖い父だったからものすごく怒られると覚悟していたが、無理に作ったような笑顔でこの場所から立ち去らせようとしてきてゴリラにつままれたような気持になった覚えがある。

 

 「ウホッ(あの時は特に何とも思わなかったが不気味なくらいに小ぎれいな部屋だ)」

 部屋の中の7割は本棚が占めており、奥の方にはかなり古びたテーブルがあった。

 とりあえず本棚を一通り眺めてみる。『バナナの栽培法』『こんな夜更けにバナナかよ』『BANANA FISHとバナナには事欠かない本棚だ。いくつかバナナ直接関係のない気もするが、パッケージ買いのものがいくつかあるのだろう。あ、BANANA FISH14巻だけないな。なんかもやっとするぞ。

 

 「ウホ(もしかしたらただの本棚なのか…?)」

 そんなことを思っていた時、机の上にBANANA FISHの14巻が置いてあることに気が付いた。

 親父か兄貴あたりの読みかけだろうかとも思ったが、二年前から親父は床に臥せ、兄貴もしばらく返ってきていないことを考えるとその線はない、もしあったとしてもさすがに戻されても文句は言われないだろうと思い、本を手に取りさっきの本棚に戻した。

 

 

 

 ウホッ

 

 

 ん?今どっかで変な音がしなかっt

 その瞬間、俺は意識を失い、目を覚ますと

 「ウホ(・・・)」

 そこには完全に干からびた人だと思わしき何かと、膨大な量の日誌のようなものが鎮座していた。